在留資格「経営・管理」の要件変更 資本金3,000万円以上に

 在留資格「経営・管理」を取得するための条件が、10月16日から改正されます。具体的な内容は以下のとおり。常勤職員の1人以上雇用や、資本金3,000万円以上─などとされておりハードルが一気に引き上げられました。

1.常勤職員の雇用について

まず常勤職員の雇用については、申請者が営む会社等において、1人以上の常勤職員を雇用することが必要になります。「常勤職員」の対象は、日本人、特別永住者や永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などに限定されます。


2.資本金の額等について

次に資本金の額ですが、3,000万円以上の資本金等が必要になります。
 事業主体が法人である場合は、 株式会社における払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社、合資会社又は合同会社の出資の総額を指します。一方、個人である場合は、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など事業を営むために必要なものとして投下されている総額を指します。

3.日本語能力について
 申請者または常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力(注2)が求められます 。相当程度の日本語能力とは、「日本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の日本語能力であり、日本人または特別永住者の方以外については、以下のいずれかに該当します。
 ・ 公益財団法人日本国際教育支援協会及び独立行政法人国際交流基金が実施する日本語能力試験(JLPT)N2以

上の認定を受けていること。

  ・ 公益財団法人日本漢字能力検定協会が実施するBJTビジネス日本語能力テスト において400点以上取得しいること
  ・ 中長期在留者として20年以上我が国に在留していること
  ・ 我が国の大学等高等教育機関を卒業していること
  ・ 我が国の義務教育を修了し高等学校を卒業していること


4. 経歴(学歴・職歴)について

 学歴および職歴につきましては、申請者が経営管理又は申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野に関する博士、修士若しくは専門職の学位(注1)を取得していること、又は、事業の経営又は管理について3年以上の経験(注2)を有する必要があります 。
 (注1)外国において授与されたこれに相当する学位を含みます。
 (注2)在留資格「特定活動」に基づく、貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為を行う活動(起業準備活動)の期間を含みます。

5.事業計画書の取扱いについて
 在留資格決定時において提出する事業計画書については、その計画に具体性、合理性が認められ、かつ、実現可能なものであるかを評価するものとして、経営に関する専門的な知識を有する者(注)の確認が義務付けられました。

 (注)施行日時点においては、以下の者が当該者に該当します。
    ・ 中小企業診断士
    ・ 公認会計士
    ・ 税理士
   

◎申請に関する取扱いについても厳格化されます。

① 事業内容について

 業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当する活動を行うとは認められないことになります。

② 事業所について
 改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があることから、自宅を事業所と兼ねることは、原則として認められません。

③永住許可申請等について
施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は、「経営・管理」、「高度専門職1号ハ」又は「高度専門職2号」(「経営・管理」活動を前提とするもの)からの永住許可及び「高度専門職1号ハ」から「高度専門職2号」への在留資格変更許可は認められません。

④在留中の出国について 
在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められません。

⑤公租公課の履行について
在留期間更新時には、以下の公租公課の支払義務の履行状況が審査されます。
 (1) 労働保険の適用状況
  ・ 雇用保険の被保険者資格取得の履行
  ・ 雇用保険の保険料納付の履行
  ・ 労災保険の適用手続等の状況
 (2) 社会保険適用状況
  ・ 健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格取得の履行
  ・ 上記社会保険料納付の履行
 (3) 事業所として納付すべき以下の国税・地方税に係る納付状況
  ・ 法人の場合
    国 税 : 源泉所得税及び復興特別所得税、法人税、消費税及び地方消費税
    地方税 : 法人住民税、法人事業税
  ・ 個人事業主の場合
    国 税 : 源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消  

費税及び地方消費税、相続税、贈与税

地方税 : 個人住民税、個人事業税

⑥事業を営むために必要な許認可の取得について
申請者が営む事業に係る必要な許認可の取得状況等を証する資料の提示が求められます。
 (注)在留許可を受けてからでないと許認可の取得ができないなど、正当な理由が認め   

られる場合には、次回の在留期間更新申請時に提出を求めます。

施行に伴う留意点

⑴ 施行日前に受け付けた申請について
本改正省令の施行日の前日までに受付し、審査を継続している在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新許可申請等については改正前の許可基準を適用します。

⑵既に「経営・管理」等で在留中の方からの在留期間更新許可申請について
・ 既に「経営・管理」で在留中の方が施行日から3年を経過する日(令和10年10月16日)までの間に在留期間更新許可申請を行う場合については、改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断を行います。 
 なお、審査においては、経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあります。

・ 施行日から3年を経過した後になされた在留期間更新許可申請については、改正後の基準に適合する必要があります。
 (注)改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況が良好であり、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新申請時までに新基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮し、許否判断を行います。

・ 「高度専門職1号ハ」(「経営・管理」活動を前提とするもの)についても、「経営・管理」の許可基準を満たすことが前提となることから、上記と同様に取り扱います。

⑶「特定活動」から「経営・管理」への在留資格変更許可申請の取扱いについて
特定活動(51号・未来創造人材(起業準備活動))からの資格変更
・ 施行日前にの前日時点で、「特定活動(51号)」の在留資格認定証明書交付申請等を行っている場合や同在留資格で在留中の場合は、「経営・管理」への在留資格変更許可申請の際に、改正前の許可基準を適用します。
・ 施行日以降に「特定活動(51号)」に係る在留資格認定証明書交付申請等を行った場合は、「経営・管理」への在留資格変更許可申請の際に、改正後の許可基準を適用します。

 当ゆうせん行政書士事務所では、これまでも「経営・管理」の申請支援を行ってきましたが、改正後もこれまで培ってきたノウハウを活用して引き続きサポートしていきます。